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鍼灸と乳がん治療〜かかりつけ鍼灸師とのがん治療〜


【第25回】あの頃と似た生活(カテゴリー:日々の生活)


家で過ごす生活が続いています。 平日は仕事の電話などで誰かと話すこともありますが、 ゴールデンウィーク中は誰とも話さず1日が終わることもありました。 世の中、自由に動き回れないことや人に会えないことにストレスを溜めているようですが、 そんなこともどこか慣れている自分がいます。

最近はひたすら散歩しています。時間があるときは約10キロ。 歩きながら頭の整理もできてクリアになるし、 普段は気づかない街の風景にハッとしたり、 程よい疲労感で夜の寝つきも良いので悪くありません。

黙々と歩きながらふと思い出しました。こんな経験は前にもあったなと。 病気をしている頃、休日までウィッグをかぶって人に会うことが煩わしく、 人目が気にならなくなる夜、坊主頭にニット帽をかぶり、 その上からパーカーのフードをかぶって歩きました。

抗がん剤で頭がぼんやりしているので道に迷うし、 足裏が痺れているので長く歩けてもせいぜい3キロ程度でしたが、 自分の内と向き合うには良い時間だったと思います。

どうして自分ががんになってしまったのか、 なぜ髪もなくなり、胸まで無くすことになってしまったのか。 歩いても、歩いても、疑問は宙に浮いたままで、 明確な回答は見つけられませんでしたが、 自分に問いかける時間は逆に大事な時間だった気がします。

人はちょっと不自由で不便な時のほうが、 物事を深く考えられるのだと思います。

当時、散歩の途中で気になる洋服のセレクトショップを見つけました。 暗い店内をガラス越しに覗き込むと、 おしゃれな服に反して怪しげな自分が映り込みました。

ギョッとしつつ「今じゃない。元気になったら来よう」と思っていたのに、 それから数年そのお店のことは忘れていました。

今年のはじめ、とあるお店の人と友達になりました。 後にそのお店の人であることがわかって驚きました。 暗い気持ちで歩いた道の先にそんな未来があったとは。

病気をしているからと言って、 停滞しているわけでも、時間が止まっているわけでもない。 その先に今はわからない未来があります。

いいことばかりでもないけど、 悪いことばかりでもありません。

今、その最中にいる方、なんとかやり過ごして欲しいと思います。 意味のない時間なんて、きっとないと思います。

つづく

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