女性の鍼灸 women's acupuncture

女性の鍼灸心と鍼灸

夫との死別による心と体への影響


【第4回】再入院


秋、夫の状態が悪化。ガンが全身に転移していることがわかり、再入院しました。 この時、もう積極的な治療はできず、痛みをコントロールすることしかできないとのこと。 あ~、カウントダウンなんだな、、そう思いました。

特に肺への転移が多く見られ、ガンは日に日に増殖し、それと共に呼吸が苦しくなっていきました。 また全身に転移しているガンのせいか、体中の痛みも強くなっていき、やがてベッドから起き上がることも難しくなりました。 若いせいもあり、進行は早かったんだと思います。

夫の体に手を置いていると「あ~気持ちいい~、気持ちいい~。」と言って、にこやかな表情になります。しかし私は、グイグイとエネルギーが 吸い取られていくのがわかりました。夫はそれだけエネルギーが枯渇していたのでしょう。5分も手をあてていると、体中がガタガタ震え出します。 私は「ちょっとごめんね。」と言って廊下にでて、呼吸を整えなくてはいられませんでした。

もっと手をあててあげたいけど自分の身が持たない、身の危険すら感じました。それまでの看病で私自身のエネルギーも落ちていたから なおさらだったのでしょう。自分の未熟さに情けない思いがしました。

ある日夫がベッドで斜め上を見ながらこう言うのです。 「観音様がいるんだよ。」「え?どこに?どんな風に?」「そこに、たくさんいるんだよ。」と。どうやらずっといらしてくれているそうです。 「私には見えないなあ。」と言うと、夫は自分の胸に手をあてました。心で見るんだよということです。

そして「今回はばあちゃんは来ないんだよ。」と言うのです。どいうことか尋ねると、 「前回の入院の時はばあちゃんが来て、がんばれ、がんばれって言ってたんだけど、今回は来てないんだ。ばあちゃん、さぼっているのかな。」と。 もともと霊感があるタイプではないし、こういうことを言う人ではなかったので、ちょっとびっくりしました。

おばあちゃんは来てないけど、観音様がいらして守ってくれているなんて、ほんとにありがたいことです。 でも観音様は迎えにいらしたのかしら?そうだとしたら安心だな。そんな風にも思いました。

それは夫と私が過ごした最後の穏やかで平和な時間でした。

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