秋、夫の状態が悪化。ガンが全身に転移していることがわかり、再入院しました。
この時、もう積極的な治療はできず、痛みをコントロールすることしかできないとのこと。
あ~、カウントダウンなんだな、、そう思いました。
特に肺への転移が多く見られ、ガンは日に日に増殖し、それと共に呼吸が苦しくなっていきました。
また全身に転移しているガンのせいか、体中の痛みも強くなっていき、やがてベッドから起き上がることも難しくなりました。
若いせいもあり、進行は早かったんだと思います。
夫の体に手を置いていると「あ~気持ちいい~、気持ちいい~。」と言って、にこやかな表情になります。しかし私は、グイグイとエネルギーが
吸い取られていくのがわかりました。夫はそれだけエネルギーが枯渇していたのでしょう。5分も手をあてていると、体中がガタガタ震え出します。
私は「ちょっとごめんね。」と言って廊下にでて、呼吸を整えなくてはいられませんでした。
もっと手をあててあげたいけど自分の身が持たない、身の危険すら感じました。それまでの看病で私自身のエネルギーも落ちていたから
なおさらだったのでしょう。自分の未熟さに情けない思いがしました。
ある日夫がベッドで斜め上を見ながらこう言うのです。
「観音様がいるんだよ。」「え?どこに?どんな風に?」「そこに、たくさんいるんだよ。」と。どうやらずっといらしてくれているそうです。
「私には見えないなあ。」と言うと、夫は自分の胸に手をあてました。心で見るんだよということです。
そして「今回はばあちゃんは来ないんだよ。」と言うのです。どいうことか尋ねると、
「前回の入院の時はばあちゃんが来て、がんばれ、がんばれって言ってたんだけど、今回は来てないんだ。ばあちゃん、さぼっているのかな。」と。
もともと霊感があるタイプではないし、こういうことを言う人ではなかったので、ちょっとびっくりしました。
おばあちゃんは来てないけど、観音様がいらして守ってくれているなんて、ほんとにありがたいことです。
でも観音様は迎えにいらしたのかしら?そうだとしたら安心だな。そんな風にも思いました。
それは夫と私が過ごした最後の穏やかで平和な時間でした。
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